はじめに

日本酒には、古くから伝承的に肌機能への効用があることが知られているが、近年、日本酒の美肌効果が科学的に証明され、その主要成分としてα-EGが注目されている。奥出雲酒造株式会社と共同研究によりα-EGを高含有する日本酒濃縮エキスパウダーの開発を行い、このパウダーを使用した美肌関連製品の開発支援を行った。

α‐EG(α-エチルグルコシド)

  • 日本酒では、発酵中の醪の中で麹菌の酵素と酵母の働きによってα-EGが生成される
  • α-EGは、コラーゲンの産生促進や肌のハリ・弾力アップ効果などが報告されている*
    *Mitsui, M., et al., J. Biol. Macromol., 21(2), 75-87(2021)
化学式

α-EGの高含有パウダーの開発

日本酒に含まれるα-EG含有量の調査

  • 精米歩合が高くなるほど(お米を磨いていないほど)、日本酒中のα-EG量が多くなりやすくなると推察できた。
  • 甘酒は麹菌の糖化反応のみで造られ、アルコールが存在しないためα-EGは生成されなかったと考えられる。液体クロマトグラフ質量分析装置

含有量比較グラフ

日本酒エキスパウダーの開発

図4

  • 日本酒を減圧蒸留して製造する焼酎の蒸留残渣液(従来は廃棄処分)をαEGを高含有する「日本酒エキス」として活用する。
  • 日本酒エキスにはアルコールが揮発してほとんど残っておらず、カビなど雑菌が繁殖してしまうため、α-EGの高濃度化と保存性・食品加工適性の向上を目指し、スプレードライ製法によってパウダー化した。
スプレードライ

スプレードライ
濃縮グラフ
原酒のα-EG (523mg/100mL) を粉末化により約6.8倍 (3559mg/100g) にまで濃縮できた。

日本酒濃縮エキスパウダー

試作

  • 日本酒を高濃度に濃縮することで、パウダーは日本酒に比べ約7倍のα-EG を含む。
  • α-EG に加えて日本酒由来の天然保湿因子(アミノ酸、有機酸)も増大。
  • α-EG は熱および酸に対して安定で、水に溶けやすいため、様々な食品への応用が可能。
  • パウダーは天然調味料として、食品の味わいを特徴づける効果もあり。
パウダー
日本酒濃縮エキスパウダー
αEG濃度 3.9%
水分活性 0.185
一般生菌数 300未満
大腸菌群 陰性

パウダーを使った製品

 「美肌」をキーワードに,α-EGを高含有する日本酒エキスパウダーを活用した商品開発を支援。

やわ肌ロールケーキ
やわ肌ロールケーキ
やわ肌フィナンシェ
やわ肌フィナンシェ
αEG_ごま豆腐
胡麻どうふ
αEG_フェイスマスク
KAMOHADAフェイスマスク

製品取扱

有限会社井山屋製菓 やわ肌ロールケーキ、やわ肌フィナンシェ
奥出雲酒造株式会社胡麻どうふ、KAMOHADAフェイスマスク

研究報告

研究報告第59号

pdfファイル「日本酒に含まれる美肌成分「α-EG」高含有パウダーの開発とその活用」(PDF:619kB)

担当科 

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生物応用科

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