概要
目的
シミュレーション・可視化技術を活用した高付加価値な製品の開発を企業と共同で行うことで、開発する製品の信頼性向上や高性能化を実現し、ターゲットとする製品の事業化を目指すとともに、連携企業の技術力の向上を目指した。
背景
シミュレーション技術は、コンピュータ上での計算により製品などの温度、応力などを計算し、計算結果を表示、可視化する技術で、状況を把握、関係者で共有できるため、解決に向けたアイデアを創出・評価する道具として有用である。一方、例えば、製造装置における計画条件からのずれ(摩耗等)に起因したトラブルの原因を見出すためには、高速度カメラ等の別の手法での可視化が適している場合もある。しかしながら、島根県内の企業においては、このような可視化技術の活用が十分に進んでいないことから、本プロジェクトにおいて、可視化技術を活用した製品開発を企業と連携して行い、開発した製品の事業化と技術力の向上を目指した。
内容
プロジェクトの活動は、可視化技術の普及を目指した「短期間な取組」と、可視化技術を活用した製品技術開発を行う「長期的な取組」を織り交ぜて行うことで、多数の県内企業に技術を認知、活用頂けるような運営を試みた。
取組
短期的な取組としては、「可視化技術の活用の提案」、「技術を企業に技術移転するための研修」、「技術を有効に活用するための技術者向けのセミナーの企画」を行った。長期的な取組は、「共同研究等により、企業と連携して技術を活用した製品開発」を行った。
達成状況
短期的な取組
県内企業58社に対して126案件の可視化技術の活用の提案を行った。可視化技術のうち、シミュレーション技術は、提案後、機械装置・設備の設計や、不具合対策、製造プロセスの改善への活用を試みた。また高速度カメラや、赤外線熱画像解析装置(温度分布の可視化装置)を活用した製造プロセスにおけるトラブルの現象把握、開発した装置の評価を行った。
普及に向けた次の段階として、シミュレーション技術の技術移転を希望される企業8社12名の技術者に対して研修を行った。この研修においては、基本的な操作に加えて、それぞれの会社が抱えておられる課題の解決に活用できるよう、オーダーメイドのカリキュラムで実施した。
また、これら技術の効果的な活用のためには基礎となる知識も必要であるため、材料力学、伝熱工学など機械関連技術を中心に49回の講習会を開催、975名の技術者が受講され、技術力の向上を図った。
長期的な取組
県内企業の持つ技術に加えて、産業技術センターのシミュレーション技術を活用することで、高付加価値な製品の開発を行った。以下に、例示する。
まとめ
自己評価
[良かった点]
- 可視化技術のノウハウが蓄積されるにつれて、高難易度な要望に対しても幅広く、比較的短時間で対応できるようになり、事業化や工場の立地に繋がった。
- 取組により可視化技術の有用性をご理解頂くことができ、技術移転(研修)に繋がった。
[足りなかった点]
- 新型コロナウイルス感染症の影響で、企業訪問が不可能な時期が長く、カメラ等を使った製造現場での課題解決の提案が十分に行えなかった。
参画企業の声
[良かった点]
- 膨大な試作時間と経費をかけることなく、有望な新商品を開発することができた。
- お客様へ数値的に回答出来、受注につなげていけるようになった。
- 今まで感覚で判断していたところが分かるようになった。
- 機械設備での状況が、可視化できたことが良かった。設備の運転条件変更テストを事前に確認できることが一番良かったことです。
- まだ研修のみ実施のため効果としては出ていませんが、シミュレーションを活用し必要最低限の試作で検証可能になればコスト減に繋がると期待されます。
- 短期間で基礎から一通りの流れを教えて頂けた。事業内容にあった例題を選定頂いたので、複数ある手法の中から実務にあったものを習得することができました。
[足りなかった点]
- 複数台(2台)で研修・実習が出来るようにライセンス数等の整備をして頂きたい。
- 当社は県西部にあり、松江までの距離が問題。西部での拠点の充実をお願いしたい。