概要

目的

県に技術蓄積のある印刷技術や評価技術を活用して、高機能で付加価値の高いセンサ等を開発し、県内企業や誘致企業の新製品開発、新事業開拓を支援する。

背景

先端イノベーションプロジェクト第一期において県は「プリンテッドエレクトロニクス」をキーワードに、エレクトロニクス分野に向けた印刷によるパターン形成技術、およびそれに付随した各種評価技術を蓄積してきた。

これらの取組の中で本技術に興味を持った日本電子精機株式会社(本社 奈良県)はテクノアーク北館内に開発拠点を設け、県とともに印刷工法の特徴を生かした新しい離床センサの開発、事業化を目指すこととなった。また、印刷技術や評価技術の展開として、県内企業の様々なセンシング応用製品の開発を支援した。

内容

離床センサシステム開発

日本電子精機株式会社とともに印刷工法を活用した使い捨ての離床センサシステムの開発を行い、病院や高齢者介護施設での実地試験を行った。同社は本システム「ジェムナース」の製品化に向けて、県内に新たに製造拠点を整備した。

潅水制御用日射センサ開発

県が開発に協力した日射センサを搭載した農業用潅水制御装置の新製品「潅水NAVI」が株式会社ニッポーから販売開始された。

取組

離床センサシステム開発

7M304043_切り抜き経済産業省「戦略的基盤技術高度化支援事業」に採択され、印刷工法の特徴である大面積パターニング、低コストの特徴を生かして、汚染時に廃棄できる、シーツ下に設置して視認されにくい、12チャンネルの検知アンテナを活かした迅速報知などの特徴を持った新しい離床センサシステムの開発を行った。低コスト化に向けたインクや基材の最適化、検知精度向上のための機械学習を用いたアルゴリズムの開発などを行った。病院と介護施設で、試作品を実際に使用した実地試験を実施し、耐久性や検知精度の確認を行った。

潅水制御用日射センサ開発

日射センサ写真低コストで高確度な光電素子型日射センサの開発を行った。光電素子型日射センサの課題である受光感度の指向性を改善すべく、光拡散板の角度依存性等を評価し、最適な材料、形状を見出した。開発した日射センサは潅水制御装置新製品に搭載された。

その他の印刷センサ開発

上述の取組のほかに、化学的な機能膜と静電容量や電圧センシングを組み合わせた独自のセンサの開発、製品化に取り組んだ。

達成状況

日本電子精機株式会社:製造拠点としての出雲工場の整備

離床センサシステムの開発の中で関連特許を7件出願した。日本電子精機は本システムの製品化に向けて斐川西工業団地内に出雲工場を整備した。また同社は本事業の推進のために2名の研究員を県内で新規に雇用した。

株式会社ニッポー:農業用潅水制御装置「潅水NAVI」の販売開始

2019年10月県が開発に協力した日射センサを搭載した潅水制御装置「日射比例式潅水コントローラ 潅水NAVI」が販売開始された。また同社は本製品の販売に際して1名の職員を新規に雇用した。

JEMカタログ枠付き
ニッポーカタログ枠付き

まとめ

自己評価

[良かった点]

  • 離床センサの開発では、県の技術シーズのもとに新しい製品を作り、県外企業を誘致するという難易度の高い目標であったが、県内に製造拠点を立地するところまでこぎつけることができた。
  • 日射センサの開発では県の評価技術を効果的に活用し、新製品の開発に貢献できた。

[足りなかった点]

  • シーズ先導型の開発で、ニーズとの技術的なマッチングに思った以上に時間を要し、プロジェクト期間内に製品化に至らないテーマがいくつか発生した。

参画企業の声

[良かった点]

  • 自社にはない機器での分析ができて開発が進んだ。
  • 関係企業、関係機関との調整や交渉にも積極的にかかわってもらい、適切な助言をもらって助かった。
  • 本件開発をきっかけに別の案件でも技術相談や不具合相談で産業技術センターを利用する機会が社内全体で増えた。

[足りなかった点]

  • コロナ禍で関係機関のコミュニケーションがはかどらず、開発が遅れてしまった。