耐雷材料の開発とそれを用いた風力発電機の耐雷システムの開発
風力発電は再生可能エネルギーの一翼を担うものとして重要視されているが、落雷による運転停止が安定操業への大きな障害となっている。落雷に対しては旧来よりブレードにレセプタと呼ばれる雷受けを設置し、これを接地して雷電流を逃がす対策が採られていた。しかし、レセプタ溶損、レセプタ外への落雷、等の問題のため旧来の耐雷システムでは不十分な場合があり、依然として落雷は風車の事故理由の大きな部分を占めている。そこで島根県内の株式会社守谷刃物研究所らと雷撃への耐久性の高い導電性材料を開発、探索し、それらを用いて落雷耐性に優れたレセプタやダイバータストリップといったデバイスを開発するに至った。
耐雷レセプタ「らいじん君」
かねてより開発していた高熱伝導性の銅-黒鉛複合材料の放熱性に着目し、落雷の熱による溶融の激しいレセプタへ応用した。人工雷試験の結果、レセプタに多用されるステンレスより溶損が大幅に抑制された。
活用したセンターの保有技術:銅と黒鉛を複合化した高熱伝導材料
金属の中でも熱伝導率の高い銅の1.5倍以上となる熱伝導率を達成!
SPS法(粉末を焼結する方法の一種)によって黒鉛をラメラ構造とすることで高熱伝導率(面内)を実現した。
人工雷試験によるダメージ(波形10/350μsec.、150±1 kA,90±10 C)
純銅:熱伝導率400W/(mK)
新材料:熱伝導率650W/(mK)
ほとんど溶融しない
新開発のレセプタについて、風車の雷被害の多い秋田県の風車にて試用したところ、旧来は毎年2回のレセプタ交換が必要であったが、新レセプタは3年以上無交換で耐久した。
高耐久ダイバータストリップ「雷伝」
風車の雷被害の様相に、レセプタ外への落雷がFRPブレードを貫通・破損させるものがある。この対策として、金属小片を並べた雷電流の経路をレセプタまで設け、レセプタ外の落雷の貫通を防ぐ「ダイバータストリップ」というデバイスがあり、航空機では多く用いられている。
しかし風車ブレードには半年に1度程度しか接近整備できないため、航空機用のものは耐久性が不足していた。そこで金属チップの形状と素材を検討し複数回の落雷に耐久し得るものを開発した。
現在、試作品について九州某所の風車で試験を実施中。
製品化事例
耐雷レセプタ「らいじん君」
高耐久ダイバータストリップ「雷伝」
特許情報
発明の名称 | 高熱伝導性を有する金属ー黒鉛複合材料およびその製造方法 |
---|---|
登録番号 | 特許4441768号 |
出願日 | 平成20年10月14日 |
権利者 | 島根県 |
発明の名称 | 風車の耐雷装置 |
---|---|
登録番号 | 特許6467683号 |
出願日 | 平成27年1月23日 |
権利者 | 独立行政法人国立高等専門学校機構、島根県、株式会社守谷刃物研究所 |
発明の名称 | 風車の耐雷装置及びそのガイド部 |
---|---|
公開番号 | 特開2021-107698 |
出願日 | 令和元年12月27日 |
権利者 | 島根県、株式会社守谷刃物研究所、学校法人中部大学、株式会社北拓 |
担当科
所属 | 電話番号 |
---|---|
(0852)60−5125 |