島根県産業技術センター
国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所
三重大学大学院生物資源学研究科

背景

石州瓦の特徴

  • 島根県西部で生産されている粘土瓦で、凍害に強く豪雪地帯や北海道南部でも使用されてきた。
  • 焼成温度が1200℃以上であるためほかの粘土瓦よりも水が浸透せず凍結や積雪の重み・塩害等にも強い瓦。

しかし…近年の出荷状況は、金属屋根材の出荷量増加に押され需要は減少しつつある上に、住宅着工数の減少も相まって非常に厳しい状況にある

屋内環境の改善

  • 屋根面は日射の影響を大きく受けるため、そこから室内に侵入する熱を制御することは建築物における屋内環境の改善において大きな課題の1つ。
  • 屋根面における日射制御に関して屋根材料と建築物の温熱環境との関係について具体的に記述してあるものはほとんど存在しない。 
石州瓦の特徴

屋根葺き材料の一つである石州瓦の屋内環境に与える影響を明らかにし石州瓦の持続的な発展を目指す!

実験

実大実験用住宅を用いた環境評価

石州瓦とガルバリウム鋼板を葺いた同仕様の実大実験用住宅の屋内環境の比較

  • エアコンを設置し、夏期と冬期に冷・暖房運転を実施した。

実大実験用住宅

実大実験用住宅を用いた環境評価

 

屋根模型を用いた降雨時の騒音評価

屋根模型への降雨打撃音を可視化した音響性能の視覚的な評価

  • 屋根模型への降雨の様子を音源探査装置で撮影し、降雨打撃音の計測・可視化を試みた。
  • 人工降雨装置および自然降雨時の評価を行った。

人工降雨装置

音源探査装置 音源探査装置

屋内騒音レベルの測定

  • 屋根模型の屋内に設置したマイクで降雨打撃音を録音し、騒音レベルを比較した。

騒音評価

設置図

結果・考察

エアコン消費電力

エアコングラフ

【エアコン稼働時の条件】

  1. 洋室12帖
  2. 夏期:冷房28℃ 上向き・風量自動
  3. 冬期:暖房23℃ 下向き・風量自動
  4. 24時間連続運転
  • 夏期の消費電力は、石州瓦葺きの方が有意に低く、石州瓦葺きは省エネ性能が高いといえた。

温度分布の可視化

温度分布

  • 石州瓦葺きの方が小屋裏温度、屋内温度共に低かった。石州瓦葺きでは屋根から侵入する熱が少なく、冷房が行き届いていることがわかった。

音源探査装置による音の可視化

大ノズル1本で散水を行い音源探査装置で撮影した。

  • 各屋根模型に対して、同様な散水を行っているにも関わらずガルバリウム鋼板葺きの屋根面が赤く表示されていた。
  • 石州瓦葺きはガルバリウム鋼板葺きよりも降雨打撃音が小さいことが視覚的にわかった。
音の可視化

屋内騒音レベル

  • 人工降雨による評価
  10分間降雨量 石州瓦 ガルバリウム鋼板
大ノズル 8.3mm 40.5dB 50.2dB
小ノズル 1.7mm 39.6dB 43.1dB
降雨なし --- 36.3dB 37.1dB
  • 自然降雨による評価
騒音グラフ
  • 石州瓦葺きはガルバリウム鋼板葺きよりも騒音レベルが有意に低く、遮音性が高いことがわかった。

まとめ

  • 屋根葺き材料の違いによって屋内環境に有意な差が認められた。
  • 石州瓦葺き屋根は断熱性・遮音性に優れており、快適で過ごしやすい屋内環境が実現できた。
  • この様なメリットを見える化し、消費者にわかりやすく発信することは、産地としての持続的発展につながると考える。

担当科 

所属 電話番号

木質材料科

(0852)60−5121