AI・通信技術を用いた支援ロボット開発プロジェクト報告書
概要
目的
AI/IoTなどの最新のデジタル技術を活用し、県内企業による付加価値が高い製品の開発や工場の自動化・省力化を支援する。
背景
県内中小企業の課題である人口減少、高齢化などによる人材不足、技術・技能伝承の問題、付加価値が高い製品開発や生産性の向上等には、デジタル技術の利用が有益である。特にAI/IoTのデジタル技術の導入は、工場の自動化・省力化に寄与できる。しかしながら、県内中小製造業ではIT人材が不在のため、デジタル技術導入のハードルが高い。そこで、工場へのデジタル技術導入の支援およびAI/IoT人材育成を実施した。
内容
AI/IoTの導入例として、AI画像判定システムの導入支援、AIを活用した新規サービスの開発、工場へのデジタル技術導入支援を実施した。
取組
AI画像判定システムの導入支援
品質管理における不良品検査は目視によって実施されており、長時間作業による負担や人為的なミスが課題となっている。そこで、AI画像判定を活用した不良品判別システムの導入支援を実施した。
AIを活用した新規サービスの開発
AI構築用画像データを自動生成するシステムを企業・大学と共同で開発した。共同開発において、自動生成する画像の特徴量(画像におけるボケ・ブレなど)の設定や、画像の自動生成手法について支援を実施した。
工場へのデジタル技術導入支援
IoT人材育成を目的として、インダストリアルエンジニアリング(IE)に関するセミナーを実施した。次に、工場へのIoT技術の導入機運を高めるために、IoT技術による工場の可視化(見える化)事例を試験的に県内企業と創出し、事例紹介の見学会を開催した。
達成状況
AI画像判定システムの開発支援
(株)ダイハツメタルに対しAI人材育成と伴走型の開発支援を行う中で、ベアリングキャップおよびブレーキドラム・ディスク、フライホイールの分類、不良検出するシステムが低コストで内製された。社内でその成果は高評価され、検査システム開発部署が新設された。
(株)ユニプランにAI画像判定に関する技術情報等を提供し、同社は不良品検査装置を構築した。同装置は、中浦食品(株)に「どじょう掬いまんじゅう」の不良品検査装置として販売された。

ディスクの異物検査

どじょう掬いまんじゅうの検査装置
AIを活用した製品開発
日本システム開発(株)と共同で自動車のナンバープレートを画像認識できるAI技術を開発した。同社は本技術を開発する過程でAI構築用データを自動生成するシステムを構築し本システムに関する特許を取得した。
更に本システムは、自動車のナンバープレート以外の画像認識においても有効性が確認できたことから、同社は汎用的なAI構築用データ生成システムを新たに構築し、AI構築用データを提供するサービス(サービス名称:画像認識AIアノテーション支援サービス)を開始した。
工場のデジタル技術導入支援
IoT人材育成のため、IEに関するセミナーを3回/2年実施し、延べ54社、78名が受講した。
工場へのIoT技術導入事例の創出のために、IEセミナーに参加したIT関連企業5社により、試験的に県内製造業3社の工場設備にIoT機器を設置し、設備の稼働状態を可視化した。これらの工場で開催した見学会でIoT機器を使った設備の可視化手法について紹介し、IoT技術の導入機運を高めた。IoT機器設置工場の1つであった(株)吉川製作所は、更にIoT機器を用いて設備モニタリングを拡充される予定である。
まとめ
自己評価
[良かった点]
- 工場のデジタル化支援では生産性向上や技術力向上に寄与した。
- IT企業および製造業と共同でデジタル化の取組を進めることにより、両者のデジタル人材の育成やデジタル化への意識向上、IT企業と製造業のマッチングに繋がった。
[足りなかった点]
- 県内中小企業ではIT人材を育成する余裕がなく、デジタル化に取り組める企業が少なかった。今後、企業内でのIT人材育成を支援する制度を充実する必要がある。
参画企業の声
[良かった点]
- AIに関する知見について、特許が取得できるほど高めることができた。
- AIによる誤品検査のシステムがスムーズにできた上に、AI技術の内製化を推進できた。
- 工場のデジタル化実証試験において、IT企業の方々と共同で取り組む事で学ぶことが多かった。
[足りなかった点]
- IoTの取組結果から得られた経験や運用の知見を企業間で共有する場があまり無かった。
- IoTの取組で取得したデータの信頼性の評価や、データの管理方法についての取組が欲しい。