概要

目的

県がこれまで培った印刷技術を活用して、曲面形状や樹脂部材などに応用できる印刷技術・実装技術を開発し、立体的な回路や構造・特性にあわせて設計された回路部材の開発を進めることで、企業と連携して関連市場への参入を図る。

背景

工業製品は小型化・薄型化・複合化が進んでおり、それにあわせ、これまでのような平坦でリジッドな形状だけでなく、曲面形状やフレキシブルに対応できる新たな製造技術や部材のニーズが高まっている。

内容

曲面印刷装置の開発

自動車用ウィンドウなどの曲面形状に対応できる印刷技術の開発と、それを応用した曲面印刷装置の開発支援を行った。

回路形成部材の開発

既存の設備を応用して検討できる印刷技術・実装技術を用いた回路部材の製品開発と、その事業化に関する技術支援を行った。

取組

曲面印刷装置の開発(共同研究:(株)曽田鐵工)

スクリーン印刷では曲面や凹面形状に印刷ができないという課題の解決のために、新たな印刷機構(リバース型転写機構 特許第7220404号)の開発を行った。あわせて、その技術を応用した小型試作装置の設計、開発を行い、実用化に向けて印刷性の評価、並びに技術の蓄積を進めた。小型試作装置開発後の2021年からは対外的なPRを行うとともに、さらに、形状認識ユニットを搭載した生産設備向け大型試作機の開発を進め、各種展示会への出展、顧客個別案件への対応等を行った。

回路形成部材の開発(共同研究:(有)にのせ電子)

 FPC(フレキシブル基板)では要求仕様が満たせない新規業界からの要望を受け、既存のスクリーン印刷技術を用い、高い屈曲性を有するLED内蔵伸縮性基板の開発を行った。LEDを内蔵しつつ高い屈曲性を付与させるため、使用する材料や基板の構造を検討するとともに、耐久性の検証を進めた。あわせて、県内外の複数社との連携を構築し、事業化に向けた最適工程の検討を行った。

達成状況

曲面印刷装置

(株)曽田鐵工と共同で、独自機構を有する曲面印刷装置(小型試作装置、生産設備向け大型試作機)の開発に成功した。本装置は特許を取得しており、(株)曽田鐵工と特許実施許諾契約を締結する。あわせて、展示会出展を含む積極的な販促活動を行い、電子デバイスや大型機械、自動車用ウィンドウなど複数社からの試作や評価に対応中である。

回路形成部材

(有)にのせ電子ほか県内外の複数社と連携することで、FPCに比べ高い屈曲性を有する伸縮性基板の開発に成功した。あわせて、新規業界からのニーズを受け、新製品向けのLED内蔵伸縮性部材を設計、試作した。

多様形状印刷転写装置特許7220404号 リバース型転写機構を用いた局面印刷機
伸縮性基板開発した伸縮性基盤

まとめ

自己評価

[良かった点]

  • 県有特許を用いて、参入市場における技術の差別化に貢献ができた。また本取組を通じて、参画企業((株)曽田鐵工)は「ものづくり日本大賞中国経済産業局長賞」を受賞され、企業の技術力PRにも繋がった。
  • 参画企業の新規業界の開拓の後押しと、製品化に向けた企業間連携の構築が支援できた。

[足りなかった点]

  • 開発に時間を要し、期間内の製品化に至らなかった。

参画企業の声

[良かった点]

  • 最新の機器やシステムに合わせた装置開発ができ、様々な分野に活用できる可能性が広がった。
  • 本取組は、自社の技術力や様々な分野での可能性を発信することができると同時に、島根県との共同開発が背景にあることにより、技術の信頼性を強調できるいい機会となった。また、特許を取得したことで展示会などにおいて積極的にPRができ、今後の発展に大きく貢献できる。
  • より新しい技術に対応するため、新しい技術を勉強するいい機会となった。
  • FPCは、折れ曲がると断線する短所があるが、今回の伸縮性基板の開発では、折れ曲がっても断線しない製造方法が確立できた。またその製造方法は、自社保有の設備で対応でき、新規設備投資が不要であった。
  • 伸縮性基板の販売先が県内には無いメーカーであり、新規業界を開拓できたことは今後に繋がると思う。

[足りなかった点]

  • 新しい印刷工法の要素開発からスタートしたため、最小のワーク寸法に対応できる装置を設計したが、ターゲットとなる分野や業界のニーズを反映したサイズの装置を設計していれば、成果の出方が違ったかもしれない。
  • 現状の製造方法・購入部材ではニーズに対してコスト面で対応が厳しく、伸縮性基板の利用対象をもう少し付加価値の高い製品で検討する必要性があった。