概要

目的

島根県に所縁のある素材の付加価値を高め、県内企業と連携し美容健康関連の製品化を行う。また機能性表示食品開発支援を行うことで新しい販路を開拓し出荷額と雇用の増加を図る。

背景

美容健康食品市場の広がりや機能性表示食品市場が注目される中、こうした変化に対応した素材の開発や販路開拓が県内事業者から期待されていた。そのため島根県産業技術センターでは平成25年から「高齢化社会対応の機能性素材開発プロジェクト」を実施し、健康機能に加え美容に関する素材開発に対応できる研究開発力を高めてきた。

内容

これまでの技術的蓄積により美容健康をキーワードに付加価値の高い島根県所縁の素材開発に発展させ、県内企業と連携した製品化を行った。さらに販路開拓支援の一環として機能性表示食品開発支援に取り組んだ。

取組

新規素材の開発に関する研究及び製品化

島根県で採取される山野草や特産品を素材として、機能性評価、発酵処理等による高機能成分への物質変換、微量有効成分の濃縮などを活用し付加価値を高め、県内企業と製品化を行った。

機能性表示食品開発支援の取組

コロナ禍においても拡大を続ける機能性表示食品市場への参入を推進するため、しまね産業振興財団や(有)健康栄養評価センターの柿野賢一アドバイザ-と連携した。県内企業向けセミナーの開催、原料に含まれる機能性関与成分の調査、消費者庁への届出支援、県内で生産される原料のシステマティックレビューの作成などを実施した。

販路開拓(展示会への出展)

開発した原料及び製品をPRするとともに新たな販路を開拓するため、連携企業とともに「健康博覧会2023」に出展した。

達成状況

新規素材の開発に関する研究及び製品化

15種類の素材を用いて32社(誘致企業1社を含む)の企業と連携し、素材開発及び製品化を進めた。その結果10種類の素材で事業化に成功し、2種類の機能性表示食品を含む16アイテム以上の新商品が上市され、現在も事業化に向けた活動が継続中である。

  • 奥出雲酒造(株)と連携し、日本酒に含まれる美容成分αEG、天然保湿因子であるアミノ酸、有機酸を豊富に含む日本酒エキスパウダーを開発した。このパウダーを使用して(有)井山屋製菓でロールケーキ、フィナンシェ、ソフトクリームなどが製品化され、また奥出雲酒造(株)ではフェイスマスクなどが製品化された。
フィナンシェ
ロールケーキ
フェイスマスク「KAMOHADA」
  • (有)タナベと連携し、全国に先駆けて葛の地上部を利用した美容健康製品開発を行った。同時に島根県産業技術センターでは葛の新たな機能性として血糖値への影響や、葛の発酵産物に美肌に繋がる新たな効果を見いだし、さらなる検証を進めている。

機能性表示食品開発支援の取組

キックオフセミナーを含む6回シリーズの届出セミナーを開催した(延べ106社、130名以上の参加)。さらに、しまね産業振興財団と連携し、伴走型機能性表示食品開発支援(参加5社、内1社で製品化、1社で届出終了)を実施した。

  • (株)トリコンと連携し、大豆イソフラボンを機能性関与成分とする機能性表示食品「骨の健康に役立つ!女性のための絹とうふ」の届出を支援した。
  • 県内で生産されるエゴマ油に含まれるαリノレン酸を機能性関与成分とする血圧及びコレステロールへの効果、また桑葉に含まれるイミノシュガーを機能性関与成分とする血糖値への効果に関するシステマティックレビューを作成した。現在これらを利用した機能性表示食品開発が4社で行われている。
機能性表示食品の製品例
機能性表示食品の製品例「骨の健康に役立つ!女性のための絹とうふ」

販路開拓(展示会への出展)

連携企業6社(しまね有機ファーム(株)、奥出雲酒造(株)、(有)タナベ、Dアミノ酸ラボ(株)、(株)オーサン、ブランディングネットワークしまね(協組))とともに「健康博覧会2023」に出展した。新規に16件の商談が開始され、その内の6件で取引が始まっている。また出展企業同士のコラボレーションによる新商品開発も進められている。

まとめ

自己評価

[良かった点]

  • 産業技術センターが苦手とする販路開拓の部分を他の支援機関と連携することで、新規素材開発から製品開発、販路開拓までの一連の支援が出来た。
  • 機能性表示食品開発支援では、システマティックレビューの作成や届出支援を通して研究員一人一人がスキルアップすることで今後の支援の幅が広がった。

[足りなかった点]

  • プロジェクトの具体的な方針決定に想定以上に時間を要したことから、期間内に製品化に至らなかった取組があり、それらについては製品化までフォローアップする必要がある。

参画企業の声

[良かった点]

  • 展示会に参加し異業種との連携の可能性が見えた。
  • 機能性表示を目標とすることで、衛生管理スキルの他、各原料の機能性成分や香り・味など商品クオリティーの管理スキルも上がり、技術面だけでなく販売面でも大きく付加価値を付けることが出来るようになった。

[足りなかった点]

  • 新規農作物の製品化は栽培環境や天候の影響で成分規格が変わることが多いため、規格設定まで3から5年と長期化することが多い。大学や農業技術センターなどと連携することで栽培研究の期間を短縮できるとより可能性が広がると感じた。