製品混入異物の分析について
2022年11月01日
異物混入はあらゆる製造業で課題となっており、原因究明と対策が欠かせません。産業技術センターでは機器分析を中心に、異物特定のための支援を行っています。
異物混入の例
鉄さび
アルミ片
昆虫
動物の糞
PPに混入した油脂
プラスチック片
分析法
異物成分の推定は、目視、燃焼、磁性判別(磁石)など特別な機器がなくてもできる場合があります。しかし、成分が全く分からない、クレーム対応で科学的根拠が必要、混入源特定のための材質判別を行いたいなどの場合には、機器分析が有効です。
- 目視判別の例(容器包装内の昆虫の羽)
形状から双翅目(ガガンボ?)の羽と推定。
- 磁性判別の例(焼き菓子表面の黒色粉)
磁性あり。鉄粉と推定。
異物分析では、大きく無機物と有機物に分けて分析法を選択します。無機物はX線による元素分析、有機物は赤外分光分析が第一選択肢となります。さらに他の手法を組み合わせることにより、より詳細な情報を得ることができます。
無機物の分析(構成元素を分析)
- EDX
有機物の分析
- FT-IR
異物分析の実際
黒色塊(パン内部から出てきた異物)
生物の核を染める色素(DAPI)を使った蛍光顕微鏡観察
黄色:酵母、カビ、青:でんぷん粒
走査型電子顕微鏡観察
パン生地にカビが生えたものと推定。
金属1(練り製品から出てきた異物)
EDXによる元素分析
検出元素:クロム、鉄、ニッケル
ステンレスたわしの一部と推定。
金属2(飲料製造工程から出た異物)
EDXによる元素分析
検出元素:アルミニウム、ケイ素
厨房機器の断片と推定。
フィルム状異物(和菓子表面に付着した異物)
FT-IRによる分析
スペクトル照合結果:ポリエチレン包装材の破片と推定。
樹脂原料選別不良(再生PSフィルムの不良品発生)
FT-IRによる分析
スペクトル照合結果:ポリエチレンテレフタレートPETが混入したものと推定。
樹脂異物(弁当に混入した異物)
EDXによる元素分析
検出元素:マグネシウム、ケイ素、カルシウム、鉄
FT-IRによる分析
スペクトル照合結果:ポリプロピレン、タルク
タルクをフィラーとするPP樹脂。パレットの破片と推定。
異物混入を減らすために
- 異物の混入原因となるものを排除
- 生産ライン・生産工程のチェック・改善
- 機器、設備の改修・更新
- 作業員のスキルアップ・気づき
- 異物発見後の対応
- 異物の材質調査(産業技術センターで支援)
- 混入源の推定(原料、機器設備、人)(産業技術センターで支援)
- 混入原因の特定(老朽化、作業手順、作業員のミス・故意)