プロジェクト開始後の環境変化

プロジェクト開始時は戦後2番目の長さとなる景気拡大局面が続いていたが、プロジェクト初年度の平成30年度には、米中貿易摩擦などを背景として、世界経済が減速し、国内でも景気後退局面に入った。
さらに翌令和元年度には新型コロナウイルス感染症が発生。全国的な緊急事態宣言が出されると、社会・経済活動への影響が拡大し、実質GDP成長率は戦後最大のマイナスに陥るなど、未曾有の危機的な経済環境となった。
プロジェクトにとっても、市場縮小や経済活動の制限によって、企業との共同研究の推進に大きな影響が生じるとともに、連携先企業においてもビジネスモデル構築や販路開拓に大きな支障をきたした。このことによりプロジェクトの事業化の遅れや成果の下振れ要因となった。

プロジェクトの成果と今後の成長へ繋がる変革

プロジェクト期間における厳しい環境変化はあったものの、県内企業と密接に連携して機動的な研究開発に取り組むことで、新製品や新規事業を創出し、製造品出荷額32億円の増と新規雇用52人を創出した。
成果目標の達成状況は各プロジェクトによって異なり、取組前から下地のあったプロジェクトにおいては、事業化の時期が早く、効果も大きかった。一方、基礎研究から開始し技術移転を目指すプロジェクトでは、県内企業との連携構築や用途開発、販路開拓に時間を要し、プロジェクト期間内の事業化に至らないものもあった。
事業化以外の面でも、プロジェクトの取組を通じて、新分野への挑戦や企業誘致が実現したこと、連携先企業の技術力やブランド力向上など体質改善が進んだことも大きな成果であった。このような変革はプロジェクト終了後も新たな成長へ繋がるものと期待できる。
また、プロジェクトは産業技術センターにとっても、技術力の向上、ノウハウの蓄積、知的財産権の取得などが進み、今後の支援能力の向上に繋がった。

(今後の成長へ繋がる変革)

  • 航空機、医療分野等の新分野への挑戦
  • 研究開発型企業の県内への工場進出
  • 工場へのデジタル技術導入による品質管理技術や生産性の向上
  • 下請け型から提案型への体質の変革等
  • 新製品・技術開発による差別化やブランド力の向上
  • 研究開発や販路開拓等を実施するための企業間連携や社内体制の強化

今後の取組

プロジェクト期間中には、脱炭素化やデジタル化等の社会・技術動向の変化が急速に進み、今後、産業構造の大きな変革が見込まれている。県内企業においては、この変革に対応し、これまで以上のスピード感で、独自の技術に基づく競争力のある製品・技術開発へ取り組むことが必要である。
また、ますます深刻化する人手不足への対応も不可欠である。県内企業の雇用維持・拡大のためには、労働生産性を向上するための技術革新や企業体質の変革がより一層求められている。
そこで令和5年度からは、県内企業のニーズに対応し、生産性向上と研究開発力の向上を両輪で進める新規事業に取り組むこととした。これまでのプロジェクトで培った技術力を活かして県内企業の技術進歩を支援し、引き続き地域の所得と雇用の拡大を目指して取り組んで行く。