浜田技術センター

1.はじめに

プラスチックは、それまでに受けた熱処理により、加熱されたときの材料の膨張・収縮の過程、あるいは熱の吸収・放出などの反応が異なる。本研究ではポリエステル(PET;ポリエチレンテレフタレート)の透明シートを用いて、熱分析装置(DSC6200 (株)日立ハイテクサイエンス)を用いて熱処理後の示差走査熱測定を行い、熱処理の影響を検討した。

2.実験方法

2.1.供試材料とその特徴

ポリエチレンテレフタレート(図1に構造式を示す)

  • 比重 1.34 融点245℃の結晶性樹脂
  • 用途 繊維製品、フィルム、食品・飲料用ボトル、自動車用、工業用
図1.ポリエチレンテレフタレートの構造式

図1.ポリエチレンテレフタレートの構造式1)

2.2.測定方法

熱分析測定を行う前に装置内で一定温度、一定時間熱処理を行った。その後、20℃まで冷却してから測定を開始した。測定での温度スケジュールの一例として図2に熱処理と測定の時間経過を示した。レファレンスには空容器を用いた。

熱処理時間は30秒から24時間、熱処理温度は90~230℃で行った。

図2.装置内で行った温度スケジュールの一例

図2.装置内で行った温度スケジュールの一例

結果

  • 結果の一例として熱処理時間を1時間で固定して熱処理温度を変えた場合の熱分析結果を表1および図3に示す。
熱処理温度(℃) 120 140 160 180 200 220
結晶融点(℃) 132.2 152.4 172.3 192.8 218.1 237.9
融解熱(J/g) 0.30 1.03 1.50 2.54 3.49 9.93

表1.熱処理で生成した結晶の融点(熱処理時間1時間)

図3.熱処理温度を変化させた場合(1h)
図3.熱処理温度を変化させた場合(1h)

 

  • 熱処理温度を固定して、処理時間を変化させた場合の結果を図4に示す。

図4.熱処理時間の影響(160℃)
図4.熱処理時間の影響(160℃)

  • 熱処理温度・時間と結晶の融点の関係を示す。

図5.熱処理温度・時間と結晶の融点の関係
図5.熱処理温度・時間と結晶の融点の関係

まとめ

  • 熱処理時間が一定の場合、生じた結晶が融解する温度(融点)は熱処理温度+12~17℃程度であった。
  • 熱処理温度を一定にした場合、熱処理時間が長くなるにつれて、生じた結晶の融点は上昇する傾向を示し、融解熱も同様に大きくなった。

文献

1.大井秀三郎,広田愃. プラスチック活用ノート. 1999,p192-194.

担当科 

所属 電話番号

有機材料・化学科

(0855)28−1881